被相続人が亡くなり、遺産分割などの相続手続を終える前に次の相続人も亡くなり、
2次、3次と相続が続いて発生することを「数次相続」と言います。
父の相続手続をしないまま続いて母も亡くなってしまった、などのケースは多いですが、
父の相続人も母の相続人もお子様だけで共通していればそれほど手間なく手続を進めることができます。
しかし、随分昔に亡くなった祖父の名義のままになっている土地を売りたいので相続登記が必要といった場合は、
数次相続が複雑になり相続人も何十人にも増えてしまうケースもあります。
前回、被相続人が亡くなる前に相続人が亡くなっている場合、
その子などが相続人となる「代襲相続」について書きました。
代襲相続と数次相続の違いは、相続人が被相続人より先に亡くなっているか、後に亡くなっているかの違いです。
上の例での大きな違いは、代襲相続ではC(亡き相続人)の配偶者EはAの相続人にならないのに対し、
数次相続ではEもCの相続人としてAの相続に関与する点です。
代襲相続では、被相続人の「直系卑属(子、孫等)」しか相続人になりません(民法887条2、3項)。
一方、数次相続では最初のAの相続でCが相続した分(1/4)につき、Cを被相続人とする2次相続でCの相続人であるE(配偶者)とF・G(子)が相続し、配偶者EもCの相続人としてAの遺産分割協議に参加する権利を持ちます。
では上の例で、もしCに子どもがいなかった場合はどのようになるでしょうか。
この場合、2次相続でのCの相続人は、E(配偶者2/3)とB(直系尊属1/3)となります。
1次相続でのCの相続分1/4をEとBで相続するので上のような持分となるのです。
次は同じ例で3次相続が発生した場合です。A、Cに続いてBも亡くなったとします。
Cの2次相続までは例1と同じです。
その後さらにBが亡くなると、Bの相続人は子のD(1/2)と孫のF・G(1/4ずつ)となります。
CがBより先に亡くなっているので代襲相続となり、EはBの相続人とはなりません。
以上から相続分を計算すると例3のようになりますが、このように数次相続が続いていくと、
非常に複雑な相続になることがわかります。
会ったこともない疎遠な相続人と連絡をとり遺産分割協議を行わないといけなくなるケースも出てきます。
相続が発生した場合は、できるだけ早めに遺産分割を行い、次の世代まで相続を持ちこさないことが大切です。