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相続・遺言

相続人から申請する所有権保存登記

2023.3.27


不動産の登記簿には、最初に不動産の物理的な情報(地番や家屋番号、種類や構造、面積等)
を記した「表題部」と、
次にその不動産にかかわる権利関係を記した「権利部」があります。
権利部はさらに所有権に関する事項である「甲区」と、
所有権以外の権利(抵当権など)についての「乙区」に分かれています。

 

建物の新築などで新たに不動産が生じた時、表題登記を申請して新しい登記簿の表題部が作られます。
表題登記はまだ登記がされていない土地や建物について初めてなされる登記で、
多くは土地家屋調査士が行います。
建物の表題登記は新築後1ヶ月以内の申請が義務付けられています。

 

 

一方、表題登記につづいて権利部に初めて行う所有権の登記を「所有権保存」登記といいます。
通常は表題登記のすぐ後に所有権保存の登記を入れます。
しかし表題登記と違って所有権保存登記は義務ではないため、
表題部だけしか登記のない建物も少なくありません。

そのような建物では表題部所有者として名前が記録されていても、権利部の登記がないため、
所有者としての権利=「所有権」を主張することができません。
建物を売却したり融資を受けたりするなら、
所有権保存登記を行って権利証(登記識別情報通知)を発行してもらう必要があります。

 

 

今回、登記簿に表題部しかない建物を相続された方よりご相談がありました。
通常の相続登記では、登記簿の権利部(甲区)に記載されている所有者(亡くなった方)の所有権を
相続登記により相続人に移転しますが、
今回は所有権の登記がされていないので、所有権移転ではなく所有権保存の登記を行う必要があります。

 

所有権保存登記は不動産登記法74条に申請適格者が定められており、
表題部所有者の相続人からも申請することができます。
必要書類は相続登記と変わりありません。
被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人の住民票と現在戸籍、
遺産分割協議書(相続人の印鑑証明書付)等を添付して申請します。

このたび表題部に記録されている所有者は何十年も前に亡くなって数次相続が起きていましたが、
申請書には「所有者:(被相続人A)(上記相続人B)住所C」と中間相続人を記載の上、
直接相続人Cさんの名義にすることができました。

 

 

不動産登記のご相談はふるえ司法書士事務所までお気軽にご相談ください。

 

(参考)不動産登記法第74条

所有権の保存の登記は、次に掲げる者以外の者は、申請することができない。

 

一 表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人
二 所有権を有することが確定判決によって確認された者
三 収用(略)によって所有権を取得した者

2 区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、前項の登記を申請することができる。
この場合において、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、
当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。