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不動産登記

名変登記が省略できる場合

2022.8.19


前回、登記名義人の住所・氏名変更登記は非常に重要な登記であることをお伝えしましたが、
登記の内容によっては例外的に名変登記を省略できる場合があります。

 

よく実務で出てくるのは以下の場合です。

 

① 所有権以外の権利の抹消登記(所有権に関する仮登記、買戻権の抹消も含む)

→ 登記義務者(抹消される抵当権者、仮登記名義人、買戻権者等)の名変登記は省略できる。

 

「・・・抹消の登記義務者に変更が生じているときは、その変更を称する書面を添付すれば
表示変更の登記を省略して直ちに抹消登記を申請することができる。」(S31.10.17民甲2370)

 

「所有権以外の権利の抹消登記」で最もポピュラーなものは、「抵当権」の抹消登記です。
ローンの完済等によって不動産に設定された抵当権を抹消する際、
登記簿上の登記義務者(抵当権を抹消される金融機関)の本店住所や商号に変更がある場合でも、
変更があったことを証明する情報(通常は会社法人等番号)を添付すれば変更登記は省略できます。
ただし、単に名称が変わっているのでなく銀行合併などを経ている場合は、
抵当権の移転登記が必要なこともあります。

 

また所有権に関する「仮登記」、「買戻権」の抹消も同様に、
登記義務者の名変登記は省略できるとされています(S32.6.28民甲1249、登記研究460号)。

 

売買や融資にあたり不動産に仮登記や買戻権がついている場合はそれらの抹消登記を入れますが、
仮登記の名義人や買戻権者に住所や名称の変更があっても、
住民票や会社法人等番号などの変更証明を添付すれば名変登記は省略できます。

 

以前、買戻権の抹消登記を申請した時、買戻権者のいくつかの会社は
商号や本店住所が変わっていましたが変更登記は不要でした。
ただ会社法人等番号では変更の沿革がつけられない会社があり、閉鎖謄本を添付して変更の証明としました。
古い権利は時間がたつと抹消に必要な書類も増えます。

 

このように、抹消される権利の登記名義人は、変更登記をしたところで結局権利は抹消されてしまうので、
便宜上名変登記は省略できるのです。

 

ただし、抹消登記の権利者(不動産の所有者)の住所や氏名に変更がある場合は、
名変登記は省略できないので注意が必要です!

 

② 相続登記において、被相続人の名変登記は省略できる。

不動産の所有者が亡くなって相続登記をする際、
登記簿に載っている被相続人の住所が古いもので亡くなった時の住所と違っていても、
その変更を証明する情報を提出すれば名変登記は省略できます(登記研究133号)。

「変更を証する情報」とは、具体的には登記簿の住所から
亡くなった時の住所までの沿革がつく住民票の除票や戸籍の附票です。
古い相続の案件だと住所がつながらないこともありますが、
いくつかの補足的な書類を提出することで被相続人の同一性が証明できれば、相続登記を行うことができます。