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相続・遺言

旧民法による相続

2020.8.30


 

何代も不動産の相続登記が行われていない場合、
旧民法による相続手続が必要になることがあります。

たとえば先祖代々所有していた山林を売却しようとしたところ、
登記の名義人が明治生まれの曾祖父(ひいおじいさん)のままだった、といったケースです。

旧民法による相続は、
相続人や相続分について現行民法と大きく違いがありますので、注意が必要です。

 

旧民法が適用されるのはどのような場合でしょうか。(参考→「相続法の変遷」

被相続人が亡くなった時期が「昭和22年5月2日以前」である場合、明治31年施行の旧民法が適用されます。

 

明治時代にできた日本の戸籍制度は、戸主(家長)を筆頭とした「家」単位のまとまりを重視したものでした。

 

旧民法による相続は、

(1)戸主の死亡または隠居等による家督相続
(2)戸主以外の家族の死亡による遺産相続

に分けられます。

 

(1)戸主の死亡または隠居等による家督相続

戸主に相続が開始した場合、特定の家督相続人(主には長男)が戸主の地位と全財産を単独で相続しました。

相続の開始原因は、戸主の死亡だけでなく隠居など生前相続も含まれます。

家督相続人になるのは、亡くなった戸主と同じ戸籍に入っている年長の男子、
基本は長男が最優先されますが、被相続人は家督相続人を指定することもできました。

また男子がいない場合は女子が戸主となり、女戸主が結婚した場合、
夫が女戸主の家に入り戸主となる「入夫婚姻」という形の家督相続もありました。

 

戸籍には「年月日前戸主〇〇死亡ニ因リ家督相続届出年月日」などと記載されているので、
これにより家督相続の事実を確認します。

登記原因は「年月日(家督相続の開始日)家督相続」となります。

 

注1 旧民法時代に家督相続が開始していても、直系卑属がなく、
新法施行までに家督相続人も選定されていない場合は、新民法による相続となります。

注2 前戸主が隠居後に取得した不動産については、
家督相続ではなく(2)の遺産相続の扱いとなります。

 

(2)戸主以外の家族の死亡による遺産相続

旧民法時代、戸主以外の家族の相続は「遺産相続」と呼ばれ、
家督相続と異なり被相続人の死亡のみが相続原因となります。

遺産相続では、直系卑属、配偶者、直系尊属、戸主の順位で相続人となり、
親等が同じ者は同順位で共同相続人となります。
新民法と比べると、第2順位の配偶者は第1順位の者がいないときに初めて相続人になることや、
兄弟姉妹には相続権がないことなどの違いがあります。

遺産相続は家督相続に比べると柔軟な相続方法に見えますが、
そもそも戸主以外の家族が不動産などの財産を所有することが少なかったので、
家督相続ほど例は多くないようです。

登記原因は「年月日(被相続人死亡日)遺産相続」となります。

 

 

古い相続登記では、被相続人がいつ亡くなったのか、
戸主であった場合に家督相続が行われていたかどうかなどを確認する必要があります。

昔の戸籍は手書きの旧字体で読み解くのも難しく、
必要な書類をそろえるのも大変手間がかかりますので、
長い間そのままにされていた相続登記をお考えの方は、
専門家にご相談されることをお勧めします。